星田直彦の雑学ブログ_1
もみじは、赤くない!? 【国語と理科】
小さい頃、「モミジ」という名の植物が存在すると思っていた。
どうやらそれが違っていると気がついたのは、小学校の中学年の頃だ。ある歌を歌っていて分かった。
秋の夕日に照る山もみじ 濃いも薄いも数ある中に……
何度も何度も歌っているうちに、「あれ?」と気がついた。
この唱歌『もみじ』の中に「楓(カエデ)や蔦(ツタ)は……」と出てくる。
どうもおかしい……。
もしかしたら、カエデやツタはともに「もみじ」なのでは?
当時の私は友人に聞くのも恥ずかしかったのか、いつの間にか「もみじ」は「秋に赤くなった葉っぱ」の総称に違いない、だから「紅葉」と書くのだ――と自分で納得した。
この時代がかなり長く続いた。
ところがだ。こんな歌を見つけた。
わが屋戸(やど)に黄変つ(もみつ)蝦手(かえるで)見る毎に
妹(いも)に懸けつつ恋ひぬ日は無し
『万葉集』にある歌だ。奈良時代の歌人、大伴田村大嬢(おおとものたむらのおおいらつめ)の読んだもの。この歌では黄色くなった葉を詠んでいる。
黄色くなった葉っぱも「モミジ」なんだ! しかも「もみつ」という動詞の名詞形が「もみじ」なんだ!
それなら、イチョウの葉っぱが黄色に色づくことも「もみつ」だ。
ということは、黄葉したイチョウの葉を「もみじ」と読んでも、間違いとは言えない。
『万葉集』には、黄葉を詠んだものは76首あるそうな。紅葉を詠んだものは6首。
この時代は、黄色の葉の方が好まれていたのかもしれない。
そういえば、「黄葉」も「紅葉」も、どちらも「コウヨウ」だ。
では、「もみじ=紅葉」という考え方が主流になったのはいつの頃なのか?
そんなことを考えながら、紅葉狩りに行くのも悪くない。