星田直彦の雑学ブログ_3

模造紙 【特別活動】

言葉も知っているし、その物体を見たり使ったりしたこともある。でも、それがどうしてその名前で呼ばれているか知らない――ということはけっこうある。

たとえば、模造紙。
授業であるいは文化祭等で、この紙を使って大きな掲示物を作ることがよくある。
いや、最近は大型モニターが教室に配備されていることも多いから、授業で使ったことがないという先生もいらっしゃるかもしれない。
しかし、いずれにしろ、言葉くらいはご存じだろう。

この模造紙、「模造紙」というからには、何かを模造しているに違いない。
それは何か?

答えは、簡単に言うと、和紙。

まあ、和紙を模造したことに間違いはないのだが、しかし、もっと入り組んだいきさつがある。紹介しておこう。

まずは、「鳥の子紙(とりのこがみ)」。
雁皮(ガンピ)を主原料にした良質の和紙だ。卵色をしているところから、「鳥の子」と呼ばれている。滑らかで、きめが細かく、光沢があり、耐久性に富んでいる。

明治半ば、大蔵省は鳥の子紙に似せた「局紙」を製造した。
これは、三椏(ミツマタ)を原料とした上質の和紙だ。耐久性があるので、証券や賞状などに用いられた。大蔵省の抄紙局というところが作ったから、「局紙」と呼ばれている。
この時点で、すでに「模造紙」である。

この局紙をオーストリアがまねた。つまり「模造」した。オーストリアが使ったのは、亜硫酸パルプだった。
さらに、明治30年頃、日本はこの「オーストリアの模造紙」をさらに模造する。こうして日本の「模造紙」は誕生した。

現在「模造紙」と呼ばれている紙の製法は明治の頃の「模造紙」とは異なっているので、本来なら別の名前をつけてもいいのだが、なぜか「模造紙」のままで呼ばれている。
つまり、今度は名前を「模造」……、いや「完コピ」しているわけだ。